公開日:2024.08.16 更新日:2024.08.16
被相続人が老人ホームに入居していても、空き家3,000万円控除は適用される?
空き家特例は、相続した空き家が一定の要件を満たす空き家である場合は、売却時の譲渡所得から上限で3,000万円の特別控除が受けられるという制度です。
この特例は、相続開始の直前時点において、亡くなられた方(被相続人)がその空き家に一人で住んでいなければ適用されません。しかし、被相続人が老人ホームに入っていた場合でも、一定の要件を満たしていれば、空き家特例の適用を受けることができます。
ここでは、空き家特例の概要や、被相続人が老人ホームなどに入居していた場合に空き家特例が適用されるための要件のほか、適用を受けるために必要となる書類などについて解説します。
目次
空き家特例(空き家の譲渡所得の3,000万円特別控除)の概要
空き家特例は「空き家の譲渡所得の3,000万円特別控除」とも呼ばれ、相続または遺贈により取得した、被相続人居住用家屋(亡くなられた方が居住していた家屋)や、家屋と被相続人居住用家屋の敷地の売却時に利用できる税制上の優遇措置です。正式には「被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例」といいます。現在のところ、適用期間は2027年12月31日までとなっています。
空き家特例は、空き家の市場流通を促進し、空き家問題の解消を目指す政策の一環として設けられました。特例の内容は、被相続人が居住していた家屋、敷地などを売却した場合、一定の要件にあてはまっていれば、譲渡所得の金額から3,000万円が控除されるというものです。
なお、相続人が3人以上いる場合は、特別控除額は1人あたり2,000万円となります。
空き家特例の適用要件
ここからは、空き家特例の適用要件を11点紹介します。特例が適用されるためには、これらの要件をすべて満たす必要があります。
相続開始から3年を経過する年の12月31日までに空き家を売却すること
空き家特例の対象となるのは、相続日から起算して、3年経過する日が属する年の12月31日までに家屋や、家屋とその敷地が売却された場合です。
1981年5月31日以前に建築された空き家であること
空き家特例の対象となる家屋は、1981年5月31日以前に建築されたものでなければなりません。
空き家が区分所有建物でないこと
区分所有建物(マンションなど複数の所有者がいる建物)は、空き家特例の対象外です。単独の所有者が全体を所有している独立した建物である必要があります。
相続の開始直前まで被相続人が1人で居住していたこと
相続の開始直前に、被相続人がその家屋に一人暮らしをしていなければ空き家特例は適用されません。親族などが同居していた場合や、部屋を賃貸していた場合は対象外となります。
空き家を売った方が、相続または遺贈により空き家を取得したこと
空き家特例は、相続または遺贈によって取得した被相続人居住用家屋とその敷地について適用されます。
相続から売却までのあいだ、誰も住んでいない空き家であったこと
空き家特例の適用を受けるには、対象の家屋が、相続から売却までのあいだ、誰も住んでいない空き家の状態であることも要件です。相続した後に家屋や家屋を取り壊した後の敷地を、事業や貸付け、居住などに使用していた場合は、この特例の適用を受けられません。
空き家を売却する相手が特定の関係者でないこと
空き家特例の適用要件には、家屋や、家屋とその敷地を売却する相手は、特定の関係者以外である必要があることも挙げられています。親子や夫婦、生計をひとつにする親族、家屋を売却した後にその家屋で同居をする親族、内縁関係者、特殊な関係のある法人などに売却した場合は、空き家特例は適用されません。
空き家の売却代金が1億円以下であること
家屋や、家屋とその敷地の売却代金が1億円以下であることも、空き家特例が適用される要件のひとつです。もし敷地を分けて、売却を複数回にわたって行う場合は、その合計金額が1億円以下でなければなりません。
所定期間内に一定の耐震基準を満たす家屋であること
空き家特例が適用されるためには、家屋や、家屋とその敷地を売却する際、その家屋が一定の耐震基準を満たしている必要があります。家屋が耐震基準を満たしていない場合、売主側で家屋の耐震改修や取り壊しなどを行わなければ、空き家特例は適用されません。
ただし、譲渡のときに家屋が一定の耐震基準を満たしていなくても、譲渡後、譲渡の日の属する年の翌年2月15日までのあいだに、買主側で家屋の耐震改修工事または取り壊しなどを行えば、特例が適用されます。
売った家屋や敷地について、ほかの特例の適用を受けていないこと
空き家特例の適用を受けるためには、売った家屋や敷地について、ほかの特例の適用を受けていないことも要件となります。
同じ被相続人から取得した別の空き家について、空き家特例の適用を受けていないこと
同じ被相続人から相続または遺贈によって取得した別の空き家について、すでに空き家特例の適用を受けている場合は、空き家特例の対象外となります。
被相続人が老人ホームに入居していた場合に空き家特例が適用される要件
空き家特例は、相続開始直前に、被相続人がその家屋に1人で居住していたことが要件のひとつとなっているのは前述したとおりです。
しかし、相続の開始の直前において被相続人が1人で居住していなくても、被相続人が要介護認定などを受けて老人ホームなどに入居していた場合は、下記の要件を満たしていれば空き家特例の適用対象となります。
特定事由に該当すること
被相続人が、介護保険法にもとづく要介護認定・要支援認定、または障害総合支援法にもとづく障害支援区分などを受けており、認知症対応型の施設や特別養護老人ホームなど、法律で定められた特定の施設に入居していたことが、空き家特例が認められる要件のひとつとなります。これを、「特定事由」といいます。
<被相続人が要介護認定や要支援認定を受けていた場合の特定事由>
・認知症対応型老人共同生活援助事業が行われる住居(いわゆるグループホーム)への入居・入所
・養護老人ホームへの入居・入所
・特別養護老人ホームへの入居・入所
・軽費老人ホームへの入居・入所
・有料老人ホームへの入居・入所
・介護老人保健施設への入居・入所
・介護医療院への入居・入所
・サービス付き高齢者向け住宅への入居・入所
<被相続人が障害支援区分の認定を受けていた場合の特定事由>
・障害者支援施設の入居・入所
・共同生活援助を行う住居への入居・入所
例えば、被相続人が介護を受けるために親族の家に移り住み、同居していて亡くなられた場合などは、空き家特例の適用は受けられません。
家屋に関する要件を満たしていること
上記の特定事由に該当する場合は、さらに被相続人が住んでいた家屋に関して、次の要件を満たす必要があります。
<被相続人が老人ホームに入居していた場合、空き家特例が適用されるための家屋の要件>
・特定事由によって、家屋に誰も住まなくなってから相続の開始の直前まで、引き続き家屋が被相続人の物品の保管場所やそのほかの用途にのみ使用されていたこと
・この期間中、家屋が事業に使われたりほかの方が住んでいたりしていないこと
・被相続人が、老人ホームなどに入居・入所をしたときから相続の開始の直前までのあいだ、被相続人が主に住んでいた場所がその老人ホームなどであること
空き家特例の適用要件を満たしていること
空き家特例を受けるためには、前述した空き家特例の適用要件も、もちろん満たす必要があります。
ただし、相続の開始直前に、被相続人がその家屋に一人暮らしをしていなければ特例は適用されないとする要件は、被相続人が老人ホームなどに入居していた場合、「老人ホームなどに入居・入所する直前に被相続人がその家屋に一人暮らしをしていなければならない」というように変わります。
被相続人が老人ホームに入居していた場合の空き家特例の手続きに必要な書類
空き家特例の適用を受けるには、まず空き家が所在する市区町村に、「被相続人居住用家屋等確認書」の申請をし、確認書を交付してもらいます。その確認書は、確定申告書に添付して税務署に提出します。
ここでは、被相続人が老人ホームに入居していた場合の空き家特例の手続きに必要な書類について解説します。
被相続人居住用家屋等確認書の交付に必要な書類
被相続人居住用家屋等確認書の交付申請時には、空き家が所在する市区町村に書類を提出します。家屋と敷地を売却した場合に必要な書類は、下記のとおりです。
<家屋と敷地を売却した場合、被相続人居住用家屋等確認書の交付に必要な書類>
・被相続人居住用家屋確認申請書
・被相続人の除票住民票の写し
・相続人の住民票の写し
・家屋もしくはその敷地などの売買契約書の写しなど
・相続人の数を明らかにする書類(登記事項証明書など)
・不動産会社の売り出し広告。もしくは電気やガス、水道の使用中止がわかる書類(閉栓証明書や使用廃止届書など)
「被相続人居住用家屋確認申請書」は、国土交通省の「空き家の発生を抑制するための特例措置(空き家の譲渡所得の3,000万円特別控除)」などから入手できます。
さらに、被相続人が老人ホームなどに入居していた場合は、下記に挙げる特定事由に該当することを証明する書類を、すべて提出する必要があります。
<特定事由に該当しているか証明する書類>
・被相続人が要介護認定、要支援認定または障害支援区分の認定を受けていたことを明らかにする書類(介護保険証の写しなど)
・被相続人が相続開始の直前において入居していた施設の名称、所在地、施設の種類が明らかになる書類(施設入居時における契約書の写しなど)
・電気・水道・ガスの契約名義、使用中止日が確認できる書類、もしくは老人ホームなどが保有する外出、外泊といった記録
確定申告に必要な書類
被相続人居住用家屋等確認書が交付されたら、必要書類を確定申告時に空き家が所在する場所を管轄する税務署に提出します。家屋と敷地を売却した場合に提出する書類は下記のとおりです。
<家屋と敷地を売却した場合、確定申告に必要な書類>
・被相続人居住用家屋等確認書
・譲渡所得の内訳書
・敷地・家屋の売買契約書の写し
・家屋・敷地の登記事項証明書
・耐震基準適合証明書または建設住宅性能評価書の写し
空き家を売却・有効活用するには「アキサポ」が便利
空き家を売却するときには、空き家特例が利用できる可能性があります。被相続人が老人ホームなどに入居していた場合でも3,000万円の控除を受けられるケースがあるので、必要要件などをよく確認しましょう。不明な点は税理士や弁護士、空き家売買などに関する専門知識を持つプロに相談することをおすすめします。
相続した空き家の売却や空き家特例の適用についてお困りの方、または空き家の売却や活用についてお考えの方は、ぜひ「アキサポ」へご相談ください。
株式会社ジェクトワンが運営するアキサポは、空き家に関するさまざまなお悩みに応えるための空き家解決サービスです。空き家のお悩みに対して親身に寄り添い、売却や活用などのさまざまな選択肢の中から最適なプランをご提案します。