公開日:2021.03.30 更新日:2023.10.02
【インタビュー】バッドボーイズ・佐田さんに聞く「DIYと空き家活用」について(前編)
お笑いコンビ「バッドボーイズ」として活動する傍ら、DIYのプロフェッショナルとして、DIYを広めるためにさまざまな活動をしている佐田正樹さん。
今回はそんな佐田さんに、DIYとの出会いやワークショップ「佐田工務店」のエピソード、さらにはアキサポが提供する空き家活用関連の話を詳しくお聞きしました。
DIYをはじめたきっかけ
―そもそもDIYを始めたきっかけとは何だったのでしょうか?
僕は実家が元々田舎で、家の裏には山があって自然に囲まれた環境で育ってきました。でも東京に来てから、長い間いわゆる都会といわれる場所に住んできたんですけど、時間が経つにつれて都会独特の空気に嫌気が差してきたんですよね。
それで、「少しでも気分を変えたい」ということで植物を置いてみたんですよ。部屋の中自体は元々何もないモノクロの空間だったんですけど、それこそもうジャングルみたいにしようと思って。
そうしたら緑を置くだけですごい癒される感覚を覚えたんで、「だったらインテリアも木のほうが良いかな?」と思ったんです。ちょうどそのころ、テレビ内蔵アンプを知り合いからもらったというのもあって、「何かうまいことできないか…」みたいな漠然としたイメージを持っていました。
今思えば、それが本当に最初のきっかけだったと思います。
DIYの初めての師匠
―DIYの漠然としたイメージはその後どのように形となったのでしょうか?
ある日車の運転中に「GALLUP(ギャラップ)」という古材屋さんを見つけまして、興味本位で入ってみたんです。そこには本当に色んな古材が置いてたので、ちょうど構想中だった「テレビ台を木にしたい」というアイデアを店員さんに相談してみたところ、「じゃあ自分で作れば良いんじゃないですか?」と図面を書いてくれたり、いろいろなアイデアを出してくれたりと、本当に親身に相談に乗ってくれました。
実はその人が後に「DIYの初めての師匠」になる江原さんだったんです。
江原さんとはもう最初からとにかく話が弾んで、すぐに「自分でやろう」という気持ちがその場で生まれて、そこからの行動は早かったですね。教えてもらった必要な道具をホームセンターで買いそろえて、自宅で寸法を図って、その足でまた古材屋さんに、という感じで。そうしたらすぐにその場で木をカットしてくれたので、木を持ち帰ってテレビ台を製作したところ、1時間ほどで完成しちゃったんですよ。
その時にもう「何これ!?」って感じで古材のカッコ良さに惚れちゃって(笑)。そのままの流れで「家の中全体を古材を使ってアレンジしたいな」と感じたんです。
DIYの魅力にぞっこん
―初めてのDIYを終えてからはどうなりましたか?
テレビ台を作ってからは、例えば当時部屋の中にウォーターサーバーを置いてたんですけど、それがもう気に入らなくなっちゃって(笑)。「これもカバーで隠そう」ということで、古材を買ってきてすぐにカバーを自分で作りましたし、家具も買い替えて部屋の雰囲気を一掃しました。
もちろんそれで終わりじゃありません。実はその頃、引っ越しを考えてたんですけど、「次はもう床とか壁からやろう!」と。家具や置くものだけじゃなく、ベースから自分でこだわって作りたいと思ったんですよね。
そうしたらちょうど同期のタケトがSNSに「賃貸でもできるDIY」みたいな情報を載せてまして。詳しく話を聞いてみると、取材で知り合った山田さんという方にやってもらったと言うので紹介してもらうことになったんです。
ちなみにこの山田さんは、テレビ番組のDIYやリノベーション系の企画で監修をやられるような方で、日本にDIYを広めようと活動されてるすごい方です。
それで、僕も直接山田さんに「引っ越す物件の床とか壁からから自分でやりたいんですよ」と相談したみたところ、「あ、できますよ」ということで。あれこれ詳しく教えてもらって、そこから本格的にDIYにのめり込んでいったわけです。
ワークショップの立ち上げ
―ワークショップ立ち上げの経緯を教えていただけますか?
自分の新居ですけど、周りの方々の知恵を借りつつ床や壁だけじゃなく、オリジナルの家具を作ったりなんかもしながら色々と手を入れてようやく完成したタイミングでお披露目会みたいなものをやったんですよ。ホームパーティみたいな感じですね。その場には、僕にDIYのイロハを教えてくれた江原さんや山田さんをはじめとして、DIYやもの作り好きの人たちが集まってたんですけど、自然と「みんなで何かやりたいね」という話が出まして。
その中で山田さんが「ワークショップやりませんか?」と提案されたので、自然な流れで「やろうやろう」と。
結果的に「佐田工務店」と名付けたワークショップを立ち上げて、今も続いている感じです。
ワークショップ「佐田工務店」の活動
―佐田工務店の活動や特徴について教えていただけますか?
佐田工務店というのは、個々が個人事業主であり、それぞれが特別なノウハウ・スキルを持っている集団なんです。もちろん会社でもなんでもなくて、「僕がアイデアを出して、それをみんなで意見を出したり煮詰めたりしながら、個性が集合するにことによって面白いプロジェクトになる」という感じですね。やっぱり、いわゆる「能力者」が集まれば、各々が負けじとセンスや腕を磨きながら、どんどん面白いアイデアが出来ていくものなんですよ。
ちなみに佐田工務店で手掛けるのは家具や内装だけじゃありません。
例えば佐田工務店で手掛けたオリジナルのハイエースは賞(ホビー産業大賞 経済産業省 製造産業局長賞)を取りましたし、活動の幅は本当に広いんです。
結果的には活動の幅が広がるほどに、僕自身のDIY関連のテレビの仕事が増えたり、知り合いから「これを作ってほしい」みたいなオファーも自然と増えていきました。
佐田工務店のポリシー・テーマ
―佐田工務店として大切にされているものは何でしょうか?
僕の方針として、基本的にお金はいただきません。そもそも依頼を引き受けるのは、知り合いだったり仲間だったりするんで。「お金じゃなくて何かでまた返してくれれば良いよ」という感じですね。
あともうひとつ。本当に自分でもあまのじゃくだと思うんですけど「これを作ってほしい」と言われると作りたくないんですよ(笑)。「じゃあ職人さんに頼んで」となるんで。
そうじゃなくて佐田工務店で手掛けるのはあくまで未知のもの。「佐田君のセンスに任せるから家一軒やってくれ、お店一軒やってくれ」みたいな感じですね。やっぱり僕は職人ではないですし、ミリ単位の仕事も好きじゃない。むしろ「手作り感のあるもののほうが味があるし温もりもある」と自分の家を手掛けた時に思いましたし、だからこそ「ちょっとした失敗も味がある風に見せていく」というところに魅力を感じてるんです。言い換えれば「新品のものより中古のものを作るほうが得意」みたいなイメージですね。
もちろんそのために自分でも勉強しました。「新品の木がなぜ古びていくのか?」「ここを触るから角が取れていく」みたいなところからです。そういった知識も踏まえて、木の性質や見え方のロジックなんかを考えながらもの作りに携わっています。木という素材は歴史によって外観が変わりますから、やっぱり自分が何かを作る時でも歴史をイメージしながら作業するんですよ。そうすれば理想に近づきますし、何より自分自身が楽しいんですよね。
〈後編へ続く〉