公開日:2021.04.28 更新日:2023.10.02
モノで溢れかえっていた空き家を蘇えらせたセルフリノベーション
東京・蒲田駅からほど近い場所に佇む、築年数約25年の和風戸建て。
今回は、10年間にわたり空き家となっていたこちらの物件を再生し、活用するまでに至った経緯を、50代で空き家のセルフリノベに初挑戦した嶋啓祐(しま・けいすけ)さんに語っていただきました。
目次
偶然だった物件との出会い
Facebookを通じて物件と出会った過去の経験
実はこの物件に辿り着くまでにも、私は賃貸物件を中心に都内のいろいろな場所を転々としてきました。もちろんそれ自体は珍しいことでも何でもないのですが、私の場合、「Facebookを通じて物件を紹介してもらう」という珍しい体験をしてきました。
Facebookで物件探しに関する情報発信をしたところ、他のFacebookユーザーから「私、嫁に行くから、今まで使っていた実家のマンションに良かったら住みませんか?」みたいな感じですね。
もちろん最初から狙っていたわけじゃなく、あくまで偶然です。でも「こういったご縁もあるんだな」と正直驚きました。
またしても出会いはFacebookから
Facebookでのご縁は私にとってひとつの転機でした。今からおよそ3年前、当時住んでいた場所の契約期限が迫り、新たな転居先を探していた時のことです。ふとこれまで物件情報を集めてきたFacebookでの問いかけが頭をよぎり「もしかしたら…」と思って、Facebookでの住まい探しにチャレンジしてみたんですね。
「引越先を探しています。不本意に空き家を相続して放置している人、マンション複数持ってるけど、リフォームに費用がかかりそのままにしている人、海外に転勤になって、持ち家をどうしようか考えてる人いませんか?」
このような情報を書いたところ、驚くことに3人の知人からすぐに返事がありました。ひとつが八王子の大きな一軒家、もうひとつが朝霞の3LDKのマンション。で、最後の物件がこの蒲田の一軒家だったんです。
蒲田駅から徒歩15分ほどで築年数は約25年。6K駐車場付きの外見は立派な和風戸建てでした。
第一印象は最悪
Facebook経由で出会った蒲田の物件ですが、初めて下見に行ったのは2018年の正月明け。
正直、第一印象は「こりゃダメだな」という感想でした。何しろ当時この家は、玄関に入ることすらできませんでしたから。
しかもすべての部屋に生活用品が所狭しと積み上げられており、空間という空間がモノでふさがれている状態だったんですね。
あらかじめ持ち主から「家の中はすごいことになってるから」とは聞かされていましたが、それにしてもひどい状態で、早々に尻尾を巻いて逃げるように帰ったのをよく覚えています。
知人のひとことがきっかけで事態は急変
蒲田の物件を諦めてからというもの、心機一転、ネットで住まい探しを継続していたのですが、なかなか良い物件には巡り合えませんでした。
そんな中、あるパーティで知人と蒲田の物件について話をする機会があったんです。その知人は「住宅・不動産・街歩きガイド」などに携わっている専門家の方なのですが、モノで溢れた空き家の話をしたところ「蒲田なんて良い物件じゃない!中にゴミがあるなら捨てちゃえば。で、そこに住めば良いんじゃない?」と。
なるほど。「そうか、確かに頼めばやってくれるし、ゴミを処分するついでに引っ越しまでしてくれるところも知ってるな…」と感じたんですね。
知人の一言がきっかけとなり、自分の中で「ここに住めるかも」という新しい選択肢が生まれた瞬間でした。
関係者を集めた話し合い
知人の助言を受けた私は早速、遺品整理協会を立ち上げた友人に廃棄の見積もりを出してもらうことに。
その後、物件の関係者を全員集めたうえで見積もりを提示したところ、その場でもう「あ、これならいける」となったんですね。ゴミや不用品を整理して、その後リノベーションを自分たちで行いながら活用しよう!と私の中でも気持ちが固まりました。
それが2018年の2月中旬ごろ。初めての内見時に「これはダメだ」と感じた物件が、わずか1か月後に「入居しよう!」と急展開を迎えたわけです。
とんとん拍子で進んだ空き家の再生
2月中旬に入居することを決断してからというもの、空き家の整理・再生はとんとん拍子で進みました。結論から言えば、3月末にはほぼ現在の状態になっていたんです。
障子やふすまの張替えなど、やることは多かったのですが、ここでも大きな力になってくれたのはFacebookのコミュニティでした。
掃除やゴミ捨てなど手伝いに来てくれた仲間は延べ30人ほど。みんなFacebook経由で集まってくれた仲間やその友達で、「なんか面白そうだから」と大勢が力を貸してくれました。しかも来てくれた時に色々持ってきてくれるんですよ。調味料、家具、日用品と、本当にいろんなものを手伝いに来るときに持ってきてくれたおかげで、お金をかけずに空き家再生を短期間で果たせたと思います。
生まれ変わった空き家は多種多様な形で活用
仲間の助けもあって見事に空き家再生に成功した後、肝心の「空き家活用」についてですが、知人やSNS経由で色々なニーズが届きました。
「ホテル代が高い」という地方からの出張者向けに実質無料(許可・届け出を行っておらず、有料サービスとして提供していない)で宿泊スペースとして貸し出している時期もありました。これはいまも続いています。
ほかにも、「リモートワークをしながら住みたい」とか「料理教室を開催したい」とか。
SNSを中心に届いたさまざまな要望に応えながら物件を活用してきたので、常に誰かはここを使っているという状況が続いています。現在は期間限定で1階の8.5畳の部屋にお住いの方がいます。
空き家再生にも大きく貢献してくれたコミュニティの力
昔から私は、SNSでコミュニティ作りや交流を続けてきました。
私が携わるコミュニティのベースは、ワインブームのころに作った「ワインクラブ」。一人だと色々なワインを楽しむのは難しいので、人を集めてたくさんのワインをシェアするのがコンセプトとなったコミュニティでした。
ただ、ワインが一般的に広まり身近なものとなった影響で、活動内容も自然と変化していくことになります。
例えば「縁結びで有名な出雲大社へのツアー」などが代表例です。以前私は飲食店をやっていたのですが、当時からワイン好きの女性には良縁を求める人が多いと感じていたんですね。
そこで出雲大社へのツアーを企画したところ、50人ほど集まりまして。実際にツアー自体の評判も良かったため、口コミでどんどん広がっていくことになり、このイベントは未だに続き2019年だけでもなんと1,800人ほどが参加しました。
こういった形で良質なコミュニティの影響力というのは本当に大きいもので、例えば過去には「炊飯器が壊れた」とSNSで書くと、3台の炊飯器が集まったこともありました。
今回の空き家再生でも同じです。手伝いに来てくれたおよそ30名もの人たちはみんなFacebook経由でしたから、改めてコミュニティの力・価値というものを再認識しました。
空き家再生・活用の難しさ
長年放置されていた空き家を再生させるには、リフォームが必要になるケースがほとんどです。結果的に自分たちの手でリノベーションを行い、再生に成功したものの、実はこの物件も当初、リフォーム関係の業者にも見てもらいました。
業者の話では「どこまでやるかにもよるが、1,000万円以上はかかる」とのことで、同じくリフォームを考えている知人が持つ別の物件でも、同程度の費用がかかると言われたそうです。
でも「いくら空き家を活用したい」と考えていても、リフォームに1,000万円以上かかると言われたら、ほとんどの人は躊躇(ちゅうちょ)しますよね。
私のようなケースは少数派ですから、みんながみんな自分の手で空き家再生できるわけではありませんし、活用のためにかかる費用の問題は、空き家活用と切っても切れない課題でしょう。
今後の展望
私はこの5年の間、建て壊し予定物件の定借契約(荒川区)、嫁いで空き家になったマンションの定借契約(目黒区)、そして今回ご紹介させていただいた蒲田の空き家だった一軒家と異なる環境での生活を経験してきました。いくつかのメディアで紹介されるにつれ、私自身も空き家問題の現実に向き合うようになってきました。
遺品整理協会と連携して空き家清掃のお手伝いをしたり、実際の活用方法について相談を受けたりする機会も増えてきました。
空き家を単にリフォームして賃貸物件として貸し出す以外に多くのニーズがあります。例えば、絵本貸出し専門のコーナーや子育てファミリー限定のお茶会ができるようなスペースを作ったり、ご高齢の方専用の囲碁将棋の場としての可能性をさぐったり「コミュニティ」を作り、続けていく仕組み作りのニーズがあることがわかりました。
ただし、空き家といっても様々な背景や事情がある物件がほとんど。現代社会の縮図にも思える空き家問題に対して解決の糸口が見えるのであればどんな小さなことからでも取り組んでいきたいと考えています。
アキサポについて
空き家の活用については法的な問題も出てきますので不動産の専門家からの助言は必須です。そして実績があることもとても大事なことだと思います。
その点でアキサポは空き家活用の一歩先を進んでいます。いくつかの事例から困難な物件を丁寧に仕込んで役に立つ場所に変えてきたことがわかります。
十分な活用コンサルティングを実施した後に初期費用なく取り組めるのはオーナーさんにとってはとてもハードルが低いのではないでしょうか。
今回紹介した物件情報
・蒲田駅から徒歩圏内
・広さは40坪の6K駐車場付きの和風戸建て
・築年数はおよそ25年で、10年前から空き家