公開日:2023.10.17 更新日:2024.04.05
親から相続した実家は「実家じまい」するべき?放置するリスクとは
全国的な高齢化や空き家の増加などにより、耳にすることが増えた「実家じまい」という言葉。意味は想像できるかもしれませんが、具体的な内容は知らない方も多いのではないでしょうか。
そこでこの記事では、実家じまいの基礎から分かりやすく解説し、実家じまいをすべき理由や必要な手続き、デメリットや注意点まで、網羅的に紹介していきます。
目次
実家じまいとは
実家じまいとは、一般的に実家の家財一式や建物本体などを全て処分することを指す言葉です。
実家じまいの手法としては、売却か解体が一般的です。また、土地を実家じまいの対象にするかはその都度決定します。土地もまとめて売却するパターンもあれば、別の建物を建てるパターンもあります。
実家じまいが増えた背景には、実家の相続に関する諸問題が関係しています。主に、実家の管理が難しい場合に検討されることが多く、実家が空き家化するリスクを回避する方法としても用いられます。
実家じまいを検討するきっかけ
実家じまいは、必要に迫られて行うケースが一般的です。思い出の詰まった実家を維持したいものの、経済的理由や時間的理由などが原因で難しく、苦渋の選択として実家じまいを選ぶことが多いです。
では、どのようなときに実家じまいを迫られるのか、ここではよくある3つのケースを紹介します。
親が亡くなり実家を相続した
実家を相続し、空き家となった実家の維持管理義務が発生したケースです。維持管理には多額の費用や多くの時間が必要で、その負担の大きさから実家じまいを選ぶことがあります。
特に、相続した実家が老朽化していると、自分だけでは建物を健全に保つことが難しい場合があります。老朽化が進むと周囲に迷惑がかかる可能性もあるため、リスク回避の手法としても実家じまいは効果的と言えます。
親が介護施設に入り実家が空き家になった
親が存命ではあるものの、介護施設に入り、長期的に実家が空き家になる場合も、実家じまいを検討する一つのタイミングです。
親の介護施設への長期入所は、空き家問題が発生する大きな要因の一つです。介護施設への入所を原因とした空き家は、親が存命なだけに実家の処分に踏み切れないケースが多く、なかには放置されることもあります。
空き家の状態が悪化すると、近隣に迷惑をかけることにもつながりますので、話しにくくても、一度改まって相談する場を設けることも必要でしょう。
相続し住んでいた実家から引っ越すことになった
相続した実家を自分で使っている場合、引っ越しが実家じまいを検討するタイミングとなります。特に、結婚や移住など、実家に戻ってくる可能性が低いときは実家じまいの必要性が高くなります。
実家じまいをする理由、放置によるリスクとは
実家じまいが注目される理由には、住宅を相続する手間の大きさや、空き家を放置するリスクの高さが関係しています。特に、空き家を放置するリスクは、費用や時間、手間など、さまざまな部分で負担が大きく、さらに状態が悪化すれば周囲へ迷惑をかける可能性も発生します。
ここでは、空き家がどのような負担をもたらすのか、実家じまいをする理由と放置するリスクから代表的な3点を紹介します。
(1)相続する世代に負担をかけないため
まず、実家じまいをするよくある理由が、相続する世代に負担をかけないために行うというものです。自分たちが動けるうちに終活の一部として実家じまいをするケースや、介護施設への入所をきっかけに、家族と話し合って検討を始めるケースなどがあります。
実際、家の相続には細々とした作業が多くあります。例えば、資産を洗い出すために通帳や有価証券を探したり、資産価値のある物を見繕ったり、自分たちで管理するために掃除をしたりといったことが該当しますが、どれをするにも、普段自分たちで使っていない住宅であるため、思った以上に時間がかかります。
しかし、実家じまいをしておけば、相続するものはお金としての資産だけになります。相続発生後の手続きをなるべく簡素化するために、存命中に実家じまいを選択するケースがあるのです。
(2)相続した後に、定期的なメンテナンスなどの維持費がかかる
相続した空き家は、使わなくても健全な状態を維持する必要があり、それにはさまざまな維持費がかかります。代表的な例としては、毎月の光熱水費や火災保険代、実家までの交通費、除草や剪定を委託する費用などが挙げられます。
空き家を健全な状態に維持する主な理由は、資産価値の維持や周囲への悪影響を避けるためなどです。通気が悪くなれば住宅は早く劣化しますし、草木の繁茂や害虫の発生が起これば、周囲からクレームが入る可能性もあります。また、建物が劣化し、瓦や外壁などが落下すれば、周辺住民に危害が及び、信頼を失うことに繋がる恐れもあります。
空き家の管理には、多くの費用がかかるだけでなく、物件を管理する責任も伴うことを覚えておきましょう。
(3)固定資産税などの税金がかかる
空き家の維持管理で特に負担が大きいのが税金です。空き家には必ず、建物と土地の固定資産税がかかり、さらに市街化区域に立地している場合は、都市計画税がかかる可能性があります。
それぞれの税額は物件の立地や状態によって異なりますが、年間10万円以上かかることは珍しくなく、都内のような立地が良い場所にある場合、年間数十万円かかる可能性もあります。
また、空き家の状態が悪化し、特定空き家に指定された場合、固定資産税と都市計画税の軽減措置が解除され、さらに負担が大きくなる可能性があります。税金は所有しているだけで発生し続けるので、相続する場合は年額を必ず把握しておきましょう。
その他、相続した実家を放置し空き家にしておくリスクは多数あります
上記で挙げたこと以外にも、空き家にはさまざまなリスクが内包されています。例えば、放火や不法投棄、盗難といった犯罪が発生するリスクや、不審者が隠れ場所として使い、周辺住民が犯罪に巻き込まれるリスクもあります。
空き家は管理者がいないため、通常の住宅に比べてこれらの犯罪に巻き込まれるリスクが高い傾向にあります。所有する空き家が犯罪の温床にならないためにも、適切な維持管理が求められるのです。
空き家を放置するリスクについては、以下の記事で詳しく解説しています。どんな空き家にもリスクは付きまとうので。なるべくリスクを減らすためにも、リスクと対策を学んでおきましょう。
まだ相続していない方!空き家を相続する際の手続きについて
ここで参考として、空き家を相続する際の手続きの要点を紹介します。まず、相続の手順から見ていきましょう。
相続手続きの手順
①被相続人の死亡による相続発生 ②相続人の確定と相続財産調査 ③遺産分割協議書の作成 ④相続財産の名義変更手続き ⑤相続税の納付 |
ここでポイントとなるのが、②の「相続人の確定と相続財産調査」及び③の「遺産分割協議書の作成です」。②で法律や遺言状の有無などに基づき、相続人及び相続割合を決定し、③で具体的な相続財産の取り分を決定します。
このとき、相続財産がお金であれば金額を分ければ済みますが、相続財産が住宅である場合は、住宅を売却してから分割する方法と、住宅に対して有する権利に応じた所有権割合を設定する方法から選ぶこととなります。
そして、気を付けたいのが、売却が完了するまでの間の税金や維持管理費です。相続が完了するまでの間も、税金や維持管理費は発生します。
相続期間中に発生した固定資産税や都市計画税は、一時的な代表者となる代表相続人を決めて支払いますが、仮に自分が代表相続人になった場合、一時的に税金を負担する可能性があることを覚えておきましょう。
ちなみに、相続の方法には以下の3種類があることも覚えておきましょう。
①単純承認:プラスの資産とマイナスの資産(負債)の両方を相続する ②限定承認:プラスの資産の範囲内でマイナスの資産も相続する ③相続放棄:プラスの資産とマイナスの資産両方の相続を放棄する |
方法の決定は、相続する資産状況に応じて決定することとなります。ただ、相続放棄を選択した場合、自分以外の相続権を有する人に影響が及ぶ点は注意が必要です。相続放棄を選ぶ場合、事前に相続人間で調整しておくことをおすすめします。
空き家の相続手続きについては以下の記事で詳しく解説しています。
実家じまいに必要な事前準備
ここからは、実家じまいの具体的な手順を紹介していきます。
まず、実家じまいをするうえで一番大切なのが事前準備です。実家じまいは個人の一存でできるものではなく、親や兄弟はもちろん、相続権を持つその他の親族まで影響が及ぶ可能性があります。
それだけに、トラブルを避けるための事前調整が大切です。終活の一部として行うケースが多いので、住宅を含めた全財産の把握もしておくと良いでしょう。
実家じまいの事前準備の代表的なこととして以下の事項があります。
・親や兄弟、親族の意向の確認 ・親の引っ越し先の調整 ・実家じまいの方法(売却や取り壊しなど) ・親の全財産の把握 ・実家じまいをして生じる不都合はないか |
ここで気を付けておきたのが、実家じまいをして生じる不都合の有無です。住宅がなくなるとまず親の住所が変わりますし、親が担保にできる資産が無くなります。
また、親が家を担保にした約束や契約を誰かと結んでいないか確認するのも忘れないようにしましょう。仮に口約束であっても、契約が成立するケースもあります。
実家じまいの事前準備として大切なのは、実家じまいによる影響を把握することです。特にマイナス面の影響は漏れなく把握し、実家じまいをしたあとでトラブルが発生することを防ぎましょう。
実家じまいの方法
実家じまいの方法は主に以下の4種類があります。
① そのままの状態で売却する ② 建物を解体し更地にして売却する ③ 不動産会社へ買取に出す ④ 売却せずに活用する |
どの方法を選ぶかは、実家じまいの目的や実家の資産価値、将来的な利用計画などによって変わってきます。ここでは、それぞれの方法について特徴やメリット・デメリットなどを解説します。
① そのままの状態で売却する
家財を処分し、建物はそのままの状態で売却する方法です。実家じまいにかかる手間や費用が一番少なく、なるべく早く実家じまいをしたい方におすすめです。
メリットは、少ない手間や費用で取り掛かれる点ですが、家の状態が悪いと売れにくく、なかなか処分できないデメリットもあります。
ちなみに、土地についてはセットで売却するケースがほとんどですが、土地は売却せずに、借地として運用する方法もあります。ただ、その場合は建物の購入者とトラブルにならないように、不動産会社のような専門家に契約条件を精査してもらいましょう。
② 建物を解体し更地にして売却する
建物の状態が悪く売却が見込めない場合や、土地の価値が高い場合などに用いられる方法です。都心部のように立地が良い場所においては、土地の利用価値が幅広く、すぐに希望の建物を建てられる更地の方が買い手が付きやすい場合があります。
③ 不動産会社へ買取に出す
買い手を見つけるのが難しい場合や、とにかく早く実家じまいをしたい場合、不動産会社に直接買い取ってもらう方法があります。不動産会社が買い取った後にリノベーションや修繕を施し、再販売する都合から、買取価格は売却した場合の約7割となってしまいますが、買い手を探す手間が省けるのは大きなメリットです。
また、売却見込み額が低い物件の場合、売却までにかかる時間や維持管理費も加味すると、買取に出した方が得をするケースもあります。
④ 売却せずに活用する
あえて売却せずに、リノベーションや修繕を施して活用するパターンです。実家じまいは売却や取り壊しが一般的ですが、「生まれ変わらせて収益化」という方法もあります。
これは、「空き家活用」と呼ばれる手法で、不動産会社がオーナーから空き家を借りあげ、利用希望者に貸し出すことで成り立っています。
例えば、空き家を専門に取り扱っている「アキサポ」では、これまで多くの空き家活用に成功しており、空き家オーナー様の「実家を守りたい」という気持ちを汲みながら、立地や物件に最適な活用を実現しています。
実家じまいで売却する際のデメリットや注意点
売却は、維持管理の手間から解放されるうえに、空き家を現金化できる方法ですが、売却してしまうからこそのデメリットもあります。
特に大きなデメリットとして、空き家を手放してしまうことにより、資産性を失うことがあります。上手く活用すれば継続収入につなげられた可能性があったとしても、売却してしまえばそれまでです。
また、売却にもコストがかかることは覚えておきましょう。不動産の売却には、仲介手数料や譲渡所得税、印紙税、登記費用など、複数の費用がかかります。元の売値が低い場合、思ったより手元に現金が残らない可能性があります。
相続した実家を実家じまいでなく、活用する方法とは
実家じまいを検討しているなかには「本当は売りたくない」という方もいると思います。そんな方におすすめなのが、実家を所有したまま収益化できる「空き家活用」の選択肢です。
空き家活用を始めるには、空き家に詳しい不動産会社を探す必要があります。実家の資産価値を上げ、オーナーと利用者の両方がWin-Winとなる利用方法を提案してくれる不動産会社に対応してもらうのが良いでしょう。
特におすすめなのが、空き家を専門に取り扱い、数々の空き家活用を実現してきた「アキサポ」です。Webサイトに事例の一部を掲載していますが、オーナー様と利用希望者の双方との話し合いを大切にしており、実家を相続する“一個人”の気持ちにも寄り添いながら空き家活用を進めています。
また、空き家活用はリノベーションや修繕が必要になることが多いですが、それらの費用はアキサポが全額負担するため、オーナー様は自己負担0円(※)から空き家活用を始められます。
所有権はオーナー様のままなので、将来的に再利用することも可能です。売りたくない気持ちが強いのであれば、売却を選ぶ前に、ぜひ一度アキサポにご相談ください。
実家じまいに関するQ&A
最後に、実家じまいに関するよくある質問を3つ紹介します。失敗しない実家じまいのためにも、注意点を押さえて効率的に進めていきましょう。
Q.1:仏壇などの処分はどうすれば良いですか?
仏壇は先祖代々への敬意を払ったり、先祖との思い出を大切にしたりと、あらゆる面で大切なものです。しかし、最近の住宅は仏壇を置くスペースがない場合が多いですし、そもそも仏壇が建物と一体化していたり、老朽化していたりで移動が難しいケースもあります。
また、仏壇の対応は家庭ごとに価値観や気持ちが異なることもあり、個別具体的に決めていく必要があります。
ただ、共通して覚えておきたいポイントとして、古い仏壇に対する「魂抜き」の供養を行うことと、小さいサイズの仏壇が売っていることは覚えておきましょう。
まず「魂抜き」とは、仏壇に宿った先祖の魂を抜く儀式を言います。先祖代々のお墓がある菩提寺が行うのが一般的で、仏壇を廃棄するときには必ず行うべきことです。また、仏壇を移動するときも、一時的に扱いが粗末になってしまうことから、魂抜きをすることがあります。
次に、小さいサイズの仏壇ですが、最近はマンションにも置けるミニサイズの仏壇が販売されています。価格も5万円以下からありますので、仏壇・仏具店で気軽に相談してみてはどうでしょうか。
Q.2:実家じまいをはじめるタイミングはいつが良いですか?
実家じまいを始める具体的なタイミングは家庭ごとに異なると思いますが、一般的には、実家が空き家になるのが明らかになったときが考えるタイミングと言えます。
代表的な例として、親が介護施設に入所したときがあります。親が存命の間に話を切り出すことに抵抗がある方も多いと思いますが、相続が発生してからでは、通帳や貴重品の保管場所が分からなかったり、契約関係を洗い出すのが難しかったりといった問題点も出てきます。
可能な範囲で、実家じまいを進めていくことで、親・子ども共に安心して相続に臨むことができるのではないでしょうか。
Q.3:実家じまいの費用を抑えるコツはありますか?
実家じまいにかかる費用を左右するポイントとしては、まず遺品整理やハウスクリーニングの代金があります。これらを可能な限り自分でやることで、費用を抑えることができます。家一軒を整理するとなると大きな労力がかかるため、早めに少しずつ進めていくのがよいでしょう。
実家の手放し方によっても最終的な収支が変わります。そのまま売却するのであれば、複数の業者から見積りをとってなるべく高く売ることが大切ですし、解体する場合は土地活用を得意とする不動産会社を探すことが大切です。
また、空き家活用を選択する場合は、高額になりやすい初期費用を抑える方法を探しましょう。「アキサポ」のように自己負担0円(※)から始められる不動産会社であれば、リスクを最小限に抑えて空き家活用を始められます。
まとめ
相続をきっかけとした空き家問題が増える現代において、実家じまいは、空き家が抱える負担やリスクの軽減が見込める効果的な選択肢です。
始めるタイミングは、実家が空き家になることが明らかになった時点がおすすめですが、親が存命の間は話が切り出しにくい方も多いでしょう。特に、売却や解体の話を持ち出すのは言葉に詰まると思います。
もし、これらの選択肢を切り出せないのであれば、空き家活用という選択肢を提案するのがおすすめです。親を始めとした先祖代々の想いを大切にしつつ、次世代のために役立つ提案ができれば、話も進めやすいのではないでしょうか。
実際、「アキサポ」には、実家を大切にしたいという声を多くいただきます。オーナー様やご家族、ご先祖の想いを紡ぎ、残していくことも、空き家活用の大切な役割なのです。
空き家活用を検討したい場合は、ぜひお気軽にご相談を。アキサポは、皆様の想いを最大限尊重し、最適な活用方法の提案に尽力いたします。