公開日:2020.05.25 更新日:2024.08.21
うちの家は大丈夫?「空き家問題」で起こりうるリスク、原因、対策を解説
「親から実家を相続したが、対処方法が分からず、そのまま空き家として放置してしまう」
いわゆる「空き家問題」が日本で社会問題になっています。
空き家を放置すれば、固定資産税などの税金がのしかかり金銭面で負担が生じるだけでなく、老朽化による倒壊リスクから近隣住民との間でトラブルに発展する可能性があります。
ここではこうした空き家の所有者が考えなければいけないリスクから、その原因、具体的な解決策まで、空き家に関するさまざまな問題について解説していきます。
目次
いま話題になっている「空き家問題」とは?
住人がいないため維持・管理ができず、意図せず第三者へ損害を与えてしまう可能性がある「空き家問題」。総務省が5年おきに実施する「住宅・土地統計調査」によれば、平成30年度の空き家数は848万9,000戸と過去最多を更新。総住宅数に占める割合は13.6%と、この比率も年々上昇しています。
空き家にはいくつかの種類があり、内訳は以下のようになります。
居住世帯のない住宅の内訳
「賃貸用の住宅」と「その他の住宅」が全体の約92%を占めていますが、この中で特に問題なのが賃貸・売却に出さず市場に流通していない「その他の住宅」です。戸数にして348万7000戸。空き家全体の41%と半数近くを占めています。これからますます少子高齢化が進み、国内で最も人口の多い”団塊の世代”が75歳以上の後期高齢者になる2025年には、こうした空き家がさらに増えていくことが予想され、より一層、問題は深刻化する可能性があるといわれています。
出典:平成 30 年住宅・土地統計調査 住宅及び世帯に関する基本集計|総務省
所有者が「空き家」のままにしてしまう理由
日本で空き家が増える原因は、少子高齢化だけでなくさまざまな社会構造が複雑に絡んでいます。その原因をひとつずつ紐解いてみましょう。
ライフスタイルの変化ともなう対策不足
日本では近年ライフスタイルが大きく変化しており、特に都市部を中心に核家族化が一般的になってきました。核家族化とは「夫婦のみ」「夫婦と未婚の子ども」「父(または母)と未婚の子ども」の世帯をさします。
以前は、2、3世代が一緒に暮らすことも多く、家も代々受け継がれていくのが一般的でした。しかしいまでは、子どもは成人したら親元を離れ、実家には親だけが住み、建てた家も一世代のみの利用となってしまうケースが当たり前になってきています。
このようにライフスタイルが大きく変わったにもかかわらず、家に対する対策・考え方が変化していないという点が問題となっています。
たとえば実家の親が高齢により足腰に不安が出てきたとき、近くのマンションに引っ越してもらったり、老人ホームに入所してもらうことになるでしょう。その際、誰も住まなくなった実家は荷物がそのままになって倉庫状態になり、親が存命のうちは売却せずにそのまま空き家となって老朽化が進む、といったケースが増えているのです。
また、相続が発生した場合も同様です。子どもが実家を相続する頃には、子どもも独立し、すでに持ち家があるケースが多く、実家を持て余してしまいます。エリアによっては賃貸に出しても借り手がつかない、売却しようにも買い手が出てこない場合もあります。実家の対処方法が見出せないまま、放置されてしまうケースもあるのです。
さらに、相続発生時に土地・建物の相続人が複数に及ぶ場合、意見が割れて話が暗礁に乗り上げるケースなどもあります。「賃貸に出す」「売却する」と方向性を定めても、所有者全員の賛同を得ない限り実施できないのです。こうした複雑な権利関係も、空き家問題を助長する一つの原因となっています。
参考:増え続ける空き家~2つの空き家問題~|NPO法人 空家・空地管理センター
参考:空き家が抱える問題はなぜ深刻化してる?リスク・解決策を紹介|イエウール(家を売る)
日本の新築信仰の強さ
少子高齢化にともない、将来人口が減少することが予想されているにもかかわらず、未だ新築住宅が次々と建て続けられています。なぜこのような事態が起きているのでしょうか。その要因としてあげられるのが、根強い「新築信仰」です。
日本では海外と価値観が異なり、建物の築年数が古いほど価値が下がる傾向にあるからといわれています。実際に各都道府県税事務所が定める償却資産の基準では、リフォームや手入れの有無は関係なく、新築年数に沿って建物価値は経年下落していく傾向にあります。また野村総合研究所が2019年6月に発表した調査によれば、「新設住宅着工戸数」は18年度の95万戸から30年度には63万戸と減少していくと予想されていますが、それでも数十万戸単位で新築住宅が供給され続けていくのです。
こうしたつくり手側もかつての高度経済成長期と変わらぬ「つくって売る」という収益モデルから脱却することができず、加えて金融の視点からも金利が低くなっている点も、未だ新築信仰を根強くさせている一因といえるでしょう。
参考:2030年度の新設住宅着工戸数は63万戸に減少、リフォーム市場は6兆円~7兆円台で横ばいが続く | ニュースリリース | 野村総合研究所(NRI)
参考:空き家対策・既存ストックの活用における政府の取り組みを聞く (2018年3月1日 No.3352) | 週刊 経団連タイムス
空き家が増えるとどんな影響があるのか(懸念されること)
では、空き家をそのまま放置すると、所有者にはどんなリスクが発生するのでしょうか。その代表的なリスクが次の3つです。
・固定資産税が上がるリスク
・近隣に迷惑をかけてトラブルに発展するリスク
・資産価値が下がるリスク
固定資産税が上がるリスク
空き家を更地にせずそのまま放置した場合、固定資産税の特例により「土地免責200平米までは税額が6分の1に減額される」という減税が認められています。しかし行政から周囲に危険を及ぼす「特定空き家」に指定されてしまうと、減税の特例が適用されなくなってしまいます。
税金だけではありません。特定空き家に指定されると、自治体が強制的に空き家を取り壊せるようになります。その際の解体費用は最終的には所有者に請求されるため、税金以外の出費を余儀なくされるリスクすら出てくるのです。
近隣に迷惑をかけてトラブルに発展するリスク
建物は人が住まなくなると、老朽化が進んでしまいます。建物が倒壊・崩壊したり、屋根・外壁が落下すれば、近隣の建物を損傷させたり、たまたま通りかかった人に危害を及ぼしてしまうリスクも出てきます。その場合、補償問題に発展する可能性があります。
また、建物に害虫・ねずみなどが住みつくようになると衛生の問題だけでなく悪臭が発生するなど、近隣住民の間で不満が高まりかねません。さらに、ゴミなどの不法投棄を誘発したり、不法侵入されて犯罪の温床となる危険性もあります。
資産価値が下がるリスク
家の老朽化が進むと、資産価格は下がってしまう可能性があります。売却をしようとしても、安い金額で手放さなければならない場合や、買い手がつかないなどのケースにつながる危険性もあるのです。
参考:空き家を放置した際に生じるデメリットとは?|ポラスの不動産売却
空き家にしないための解決策
では、空き家のまま放置しない場合、どのように対処すればよいのでしょうか。
大きく分けて4つの方法があります。
・個人への売却
・業者への売却
・管理を委託する
・活用する
家を売却すれば、現金として資金を得ることができます。しかしながら、更地として売却する場合には解体費用がかかり、売却して得た資金よりも費用がかさんでしまう可能性もあります。また、管理を委託する場合にも費用がかかり、老朽化を止める根本的な解決には至りません。
そこでおすすめしたいのが、「活用する」という対策です。空き家をリノベーションし再活用すれば放置するリスクを抑えるだけでなく、資金を得られる可能性もあります。
活用の手段は建物の種類によりますが、おおむね以下の選択肢があります。
・賃貸住宅として貸しだす
・リフォームしてシェアハウスにする
・解体して駐車場にする
・リノベーションしてテナントとして貸し出す
状況により手段が異なるため、自分の空き家で何ができるか、一度専門家に相談してみるとよいでしょう。
空き家活用のプロに相談する「アキサポ」
思い出の場所を次の世代へ
空き家の有効活用術は、一人で考えると選択肢が狭まりますが、周囲を見渡せば、周囲住民に迷惑をかけず、次世代に喜んで使ってもらえる有効策がいくつも見えてきます。
思い出の詰まった家を手放すのは、抵抗があるかもしれません。しかしそのまま放置するのではなく、必要としている人に再利用してもらうことで、自分の未来や地域社会を明るいものへと変えていくことができます。自宅をうまく「活用する」ことが、空き家問題の減少につながっていくのです。