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公開日:2022.09.16 更新日:2023.09.30

生産緑地の2022年問題で懸念される事項と所有者がとるべき3つの選択肢

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街中に農地を持っている方なら、生産緑地の2022年問題について1度は聞いたことがあると思います。中には不動産会社から売却や活用を勧められた方もいるのではないでしょうか?

実は生産緑地の2022年問題とは、土地需要や価格などに影響する可能性がある大きな問題。加えて空き家の増加にも繋がることが懸念されているのです。

そこでこの記事では生産緑地の2022年問題によって何が起こるのか、影響や対策、そしてなぜ空き家問題に繋がるのかも解説します。

生産緑地の2022年問題とは?何が起きる?

住宅街の空からの風景

生産緑地の2022年問題を一言で言うと、「生産緑地が一斉に売りに出される可能性がある問題」です。

生産緑地制度は1992年(平成4年)にスタートした制度で、制度により指定される「生産緑地」の期間が30年と定められています。

1992年(平成4年)のスタートと同時に多くの生産緑地が指定されたのですが、これらの指定が2022年に一斉に期限を迎えるのです。

では、生産緑地が一斉に切れることで何が起こるのか、具体的に見ていきましょう。

生産緑地とは

生産緑地とは、1991年(平成3年)に改正された「生産緑地法」に基づく指定を受けた、市街化区域内にある農地のことです。本来市街化区域内の農地は宅地並み課税ですが、生産緑地に指定されると、30年間の営農の継続を条件に固定資産税の減額や相続税の猶予などが適用されます。

また、生産緑地は指定から30年間は基本的に売却ができません。30年経つ前に売却できるのは特定の条件に適合した場合で、売却手続きは、まず農地のある市区町村へ買取の申し出をして、不成立だった場合に一般に売却ができる流れとなります。

生産緑地法の内容と変遷

生産緑地の根拠法である「生産緑地法」は、1974年(昭和49年)に制定された法令です。

法律の目的は良好な都市環境の形成で、制定の背景には、市街化区域内の農地が宅地並み課税となることに伴う営農者の保護がありました。

1991年(平成3年)になると、宅地供給促進が特に必要な3大都市圏に関して税制の改正があり、その影響で生産緑地法も現在の法文に改正。1992年から現在の生産緑地制度がスタートし、全国の市街化区域内に多くの生産緑地が指定されることとなりました。

生産緑地の2022年問題により何がおきるのか

生産緑地の指定を受けた農地は、固定資産税の減額と相続税の猶予の替わりに30年間は営農の継続と売却の制限が課されます。

多くの生産緑地は1992年に指定されているため、指定から30年を迎える2022年には多くの生産緑地が期限を迎え、生産緑地の解除や農地の売却が可能となります

これによる影響は大きく下記の2点です。

1.1度に大量の宅地が供給される
2.固定資産税や相続税が宅地並み課税になる

まず前者は、土地の需要・供給バランスに影響する問題で、エリアに大量の宅地が供給された場合、そのエリアの地価が下がる可能性があります。

後者は農地所有者が抱える問題で、固定資産税が高額になるうえに、相続税を猶予してもらっている場合は、その相続税を支払う可能性も出てきます。農地は1,000平方メートル単位で保有しているケースもあるため、解除されると年間の固定資産税が100万円以上、相続税が億単位になるケースも十分起こり得ます。

生産緑地の2022年問題で影響が懸念されるエリア

畑の様子

生産緑地の2022年問題の影響が特に大きいと考えられるのは、東京、大阪、名古屋を中心とする3大都市圏です。この3エリアは特に生産緑地の指定が多く、また、地価の関係から影響も大きいとされています。

その中でも、都市の中心部ではなく、宅地と農地が入り交じった郊外地で影響が大きいと言われています。

つまり、地価が高い場所に多くの農地を持っているほど、解除された場合の税金に関する影響が大きく、多額の税金の支払いを避けるために土地を手放す人が多いと考えられるのです。

2022年問題における行政の対応

生産緑地の2022年問題は影響が大きいため、行政もさまざまな対策を行っています。

全体的な流れとしては、生産緑地の指定を延長するもので、生産緑地の一斉解除による影響を小さくする方向性となっています。

特定生産緑地制度の創設

特定生産緑地制度とは、すでに指定済みの生産緑地に対して「特定生産緑地」の指定ができる制度です。

特定生産緑地とは、簡単に言うと生産緑地を10年間延長する制度で、指定を受けることで受けられる固定資産税減額や相続税猶予の条件も同じとなっています。

特定生産緑地の指定を行うのは全国の市区町村で、特定生産緑地に指定された農地は、指定から10年経過する前なら、繰り返し10年間の延長を受けられます。

生産緑地に指定できる最低面積を500㎡→300㎡へ引下げ

2017年(平成29年)の生産緑地法改正に伴って、生産緑地に指定できる最低面積が500平方メートルから300平方メートルに引き下げられました。

ただし、この条件は市区町村長が条例を定めている場合に限るため、制度の運用は市区町村ごとに異なります。

生産緑地に設置できる施設等の拡充・追加

改正前の生産緑地制度では、生産緑地内に設置できる施設は、ビニールハウスや音質、農機具の収納施設など、主に農業を行うための施設に限られていました。

しかし、農業の6次産業化の推進を図る観点から、改正後は下記3つの施設が追加されました。

1.生産緑地内で生産された農産物などを主たる原材料とする製造・加工施設
2.生産緑地内で生産された農産物など、または①で製造・加工されたものを販売する施設
3.生産緑地内で生産された農産物などを主たる材料とするレストラン

生産緑地所有者がとるべき選択肢とメリット・デメリット

メリットとデメリット

実際に生産緑地の期限が来る場合、どのような対応を取るのが正解なのでしょうか?

選択肢としては、「売却・活用」か「営農の継続」の2択になりますが、それぞれのメリット・デメリットを把握しておきましょう。

買取りの申出を申請する

生産緑地の指定から30年が経過すると、農地のある市区町村に対して買取りの申出ができるようになります。農地を売却したい場合は、まずこの手続きから行う必要があり、市区町村への売却が不成立だった場合は、不動産会社や個人など、一般への売却が可能となります。

買取りの申出のメリットは、農地をまとまったお金に現金化できる点ですが、一方で土地を手放してしまうため、継続的な収入につなげられないデメリットもあります。また、相続税の猶予を受けていた場合、生産緑地解除に伴って猶予されていた相続税の支払いが発生する場合があります。

特定生産緑地の指定を受ける

今後も農地として使い続けたい場合は、固定資産税と相続税に関して生産緑地と同等の措置が受けられる、特定生産緑地の指定を受けましょう。指定後も、指定から10年経過する前なら、繰り返し延長することができます。

特定生産緑地のメリットは、農地として維持し続けやすい点です。一方のデメリットは、土地の利用方法が農地に限られる点です。ただ、法改正に伴って、農業に関する一定の事業用建築物は建築できるようになっています。

特定生産緑地の指定を受けず、現状の生産緑地のままにする

特定生産緑地の指定から30年が経過した生産緑地は、自動的に生産緑地が解除されるわけではなく、そのまま指定が継続されます。

ただし、固定資産税は5年間の経過措置を経て宅地並みに戻り、相続税については次回の相続発生時に納税猶予を受けることができなくなります。

農地の売却については、制限期間の30年を経過しているため、いつでも買取りの申出が可能となります。

3つケースのメリット・デメリット

メリットデメリット
買取りの申出を申請する・農地を現金化できる
・農地を手放す必要がある
・猶予されていた相続税の支払いが発生する場合がある
特定生産緑地の指定を受ける・引き続き固定資産税減税と相続税猶予が受けられる
・10年ごとに更新できる
・指定期間中は農地の売却ができない
生産緑地のままにする・指定から30年経過していればいつでも買取りの申し出ができる・固定資産税の減税が段階的に解除される
・相続税の納税猶予が解除される

生産緑地の2022年問題により懸念される日本の空き家増加

2022年に多くの生産緑地が解除され、市場に多くの土地が供給されると、新たな住宅が多く建築されることが予想されます。

現在日本では、高齢化や人口減少などを背景とした空き家の増加が問題となっており、多くの住宅供給は、この問題を加速させることが懸念されます。

空き家問題は、単純に「空き家が増える」だけでなく、管理不十分な空き家による周辺環境の悪化や防犯上の問題、空き家所有者の負担増など、さまざまな課題が含まれています。

そのため、生産緑地解除による多くの土地供給は一概に喜ばしいことではないのです。

空き家の有効活用を行うためのヒント

では、もし自分が空き家を持つことになってしまったらどうすればよいのでしょう?

主な方法としては「売却」「活用(賃貸)」「保有」の3パターンになります。

売却・活用(賃貸)・保有のメリット・デメリット

・売却:まとまったお金になるが所有権を手放す必要がある
・活用(賃貸):まとまったお金は入らないが、所有権を持ったまま継続収入が得られる
・保有:自分の好きなときに好きなように使える

いずれも一長一短ですが、弊社がおすすめする方法が「活用(賃貸)」です。

継続収入は不動産を売却した際にかかる不動産取得税がかからず、収入の計画が立てやすい特徴もあります。また、賃貸期間が終了すれば、再度自分で使うことも可能です。

活用の際に気になるのが手続きやリノベーションにかかる費用ですが、弊社ではその点をカバーできる空き家活用サービス「アキサポ」を運営しています。

「アキサポ」を介して空き家活用をしていただく場合、必要な手続き費用やリノベーション費用は「アキサポ」が負担するため、オーナー様の負担を大きく減らすことができます。

賃貸成約後は、月々の賃料の一部をオーナー様へ還元するため、継続収入にも繋がります。空き家が少しでも心配な方は、ぜひお気軽に「アキサポ」にご相談ください。

生産緑地を解除するなら資産になる使い方を

期限を迎える生産緑地の問題は、普段不動産に触れていない方にとっては悩ましい問題だと思います。特に、相続した農地の場合は農業を続けるのも難しいですよね。

そんなとき、売却か活用(賃貸)の選択肢が出てくることになりますが、お金の得方や土地の所有権などを見比べるとなかなか決めにくいと思います。

重要なのは、せっかく解除するなら土地が自らの資産になる使い方をすること。とりあえず処分するのではなく、可能な限り収入に繋がる方法を考えましょう。

「アキサポ」は、そんな悩みにも寄り添う空き家マッチングサービスです。空き家のほかに空き地も取り扱えますので、ぜひ一度気軽に相談してみてください。

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