公開日:2022.01.07 更新日:2023.09.30
遺産相続の手続きの流れや相続税などを解説
相続をする際に空き家を取得するケースは非常に多いです。
ただ、人生の中で相続というのは何回もあるわけではありません。
年齢を重ねている方でも経験したことがない人も多く、いざ相続が発生するとなると不安になりますよね。
そこで今回は、空き家の困りごとを幅広くサポートしてきたアキサポが、相続とはそもそも何なのか、どういった手順で相続の手続きは進めたらよいのかなどの相続の基本について解説します。
目次
1.遺産相続とは?
まずそもそも相続とは、死亡した人(被相続人)の財産を残された人(相続人)が承継すること。財産とは、現金や土地、建物などの資産および借入金などの債務を指します。つまり財産には、プラスの財産とマイナスの財産があるということになります。
プラスの資産には、例えば以下のものがあります。
①土地や土地の上に存在する権利
・土地→地、農地、山林、原野、牧場、池沼、鉱泉地、雑種地等
・土地の上に存在する権利→借地権、定期借地権、地上権
②家屋・設備・構築物
→戸建住宅、共同住宅、マンション、店舗、工場、貸家、駐車場、庭園設備等の付属設備
③預貯金・現金・貸金庫の中にある財産
④国債証券・社債・株式・手形・小切手など有価証券
→国債、地方債、社債、上場株式、非上場株式、受益証券、証券会社、銀行、商工中金、労働金庫、農林中金、信託銀行、信託金庫、信用組合、ゆうちょ銀行、生命保険会社、損害保険会社
⑤貸付金、立替金などの債権
→第三者への貸付金債権、税金の還付金債権、未収報酬債権、損害賠償請求権、慰謝料請求権などの債権
⑥知的財産権→著作権、工業所有権(特許権・実用新案権・意匠権・商標権)
⑦事業用財産→機械器具、農耕具、棚卸資産(商品、製品、原材料)、売掛債権
⑧家庭用財産→自動車や貴金属、絵画骨董品
⑨立竹木、ゴルフ会員権、占有権、形成権(取消権、解除権、遺留分侵害額請求権)
マイナスの財産には以下のものがあります。
①借入金
→住宅ローンの残高債務、車のローンなどの割賦契約月割賦金、クレジット残債務等
②未払金
→土地や建物を借りていた際の賃借料や水道光熱費、通信費、管理費、リース料、医療費等
③敷金・保証金・預り金・買掛金・前受金
④保証債務、連帯債務
⑤公租公課
所得税、消費税、住民税、固定資産税、土地計画税、相続税(延納)、贈与税、国民健康保険料等
⑥葬式費用
被相続人の葬式費用は、相続開始時に現存する被相続人の債務ではありませんので、マイナスの相続財産にはなりませんが、相続開始に際して必然的な支出であるため、相続税上、被相続人の債務として債務控除の対象です。
1-1.相続人とは
相続に関する法律を定めた民法では、相続人の範囲を被相続人の配偶者と一定の血族に限っており、法定相続人といいます。
相続人には優先される順序があり、それらは民法で順位が定められています。
まず、被相続人の配偶者は常に相続人で、被相続人の子が第1位になります。
もし、子が亡くなっていていれば孫が代わりに相続をします。(代襲相続)
次に被相続人からみて親(父、母)や祖父母などの直系尊属が第2位、被相続人からみた兄弟姉妹が第3位になります。被相続人に子も親もいなければ祖父母が第2位となり、子も親も祖父母もいなければ兄弟姉妹が第3位になるということです。
ここでポイントとなるのが子。
子には、養子、非嫡出子、胎児を含みます。
養子には普通養子と特別養子の2種類があります。
普通養子は、養子が実父母との親子関係を存続したまま、養父母との親子関係をつくるという縁組における養子で、養子は実父母と養父母の両方の相続人となります。
特別養子は、養子が実父母との親子関係を断ち切り、養父母との親子関係をつくるという縁組における養子で、養子は養父母のみの相続人となります。
正式な婚姻関係のない人との間に生まれた子を非嫡出子といい、実の子供に含まれます。
ただ、被相続人が男性の場合には認知が必要です。
胎児は、被相続人の死亡時に生まれていない子を指し、すでに生まれたものとして相続人となります。
ただ、実子と養子、非嫡出子の間に順位の差はなく、同順位になります。
▼引用:ランドマーク税理士法人 相続人は誰になる?相続人になれる人の優先順位をわかりやすく解説(最終閲覧日:2021年12月29日)
https://www.zeirisi.co.jp/souzoku-tetuduki/heir-rank/
1-2.遺言書の有無
遺言とは、生前に自分の意思を表示しておくことをいいます。
遺言の方式、いわゆる遺言書には3種類あります。
①自筆証書遺言 ②公正証書遺言 ③秘密証書遺言 |
遺言にまつわるポイントは、
・満15歳以上で、意思能力があれば誰でも行うことができる ・遺言書が複数出てきた場合は、作成日の新しいほうが有効となる ・いつでも全部または一部を変更することができる |
1-2-1.自筆証書遺言
遺言書本文を自ら書いて作成する遺言書。
何に書くか、何で書くかなどの条件や制限はなく、費用もかからないため手軽に作成できるところがポイントです。
自筆証書遺言は、無効になりやすいという点もあります。
民法で「自筆証書によって遺言をするには、遺言者がその全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない」とあるため、日付や印がないだけで遺言書は無効扱いとなってしまいます。
1-2-2.公正証書遺言
公正証書遺言とは、公証人に作成してもらう遺言書。
自筆証書遺言と比べて確実性が高く、無効になりにくい点がポイントです。
そのぶん手間と費用がかかりますし、作成に立ち会ってくれる証人は2人必要ですが確実で安心できます。
1-2-3.秘密証書遺言
秘密証書遺言とは、中身を隠したまま存在を公証役場で認証してもらえる遺言書。
誰にも遺言書の内容を知られないというメリットがある一方で、無効になりやすかったり手間と費用がかかったりする点であまりおすすめできません。
1-3.相続の承認と放棄
相続人は、被相続人の財産を相続するかどうかを選択できます。
相続には、以下の3種類があります。
・単純承認 ・限定承認 ・相続放棄 |
1-3-1.単純承認
単純承認は、被相続人の財産を資産も負債も含めてすべて承継することをいいます。
相続人が相続の開始があったことを知った日から3ヶ月以内に、限定承認や相続放棄をしなかった場合には単純承認したものとみなされます。つまり、特に手続きをしないままでいると、単純承認となるということです。また、相続人が相続開始後に相続財産の全部または一部を処分(売却など)した場合も、単純承認したものとみなされます。
1-3-2.限定承認
限定承認とは、被相続人の資産の範囲内で、負債を承継することをいいます。具体的には、被相続人の財産が500万円、借金が1,000万円で、限定承認をした場合、弁済しなければいけない借金の金額は500万円となり、残りの500万円の借金については弁済しなくてよいというものです。
限定承認をする場合には、相続の開始があったことを知った日から3ヶ月以内に、相続人全員で家庭裁判所に申し出る必要があります。つまり、一人は限定承認、もう一人は単純承認、ということはできず、必ず「相続人全員で」というのが限定承認の特徴です。
1-3-3.相続放棄
被相続人の財産に関する相続権を一切放棄することをいいます。
相続放棄するには、相続人が相続の開始があったことを知った日から3ヶ月以内に、家庭裁判所へ相続放棄の申述を行う必要があります。
2.遺産相続の流れを解説
相続は、被相続人が亡くなった時点で開始になりますが、一方で相続にかかる手続は「相続の開始を知った日」、つまり被相続人の死亡を知った日の翌日を起算日とします。
〇日以内に完了させなければならない、など、相続の手続きには期限が伴うものも多いです。ただ、誰しもが相続の手続きに慣れておらず、不安に感じるでしょう。
ここでは、遺産相続に関する一連の流れについて、期限つきで解説します。
2-1.遺産相続手続きのスケジュール
ここでは、遺言書がない場合のスケジュールを記載します。
期限 (被相続人の死亡を知った時から) | 手続き内容 |
7日以内 | ・死亡届の提出★ ・死体火葬許可申請書の提出★ ・埋葬許可書の申請★ ・退職手続き・葬儀準備☆ |
2週間以内 | ・年金受給権者死亡届の提出★ ・健康保険や介護保険の資格喪失届の提出★ ・世帯主変更届の提出★ ・年金受給停止の手続き★ |
1ヶ月以内 | ・運転免許証、パスポートの返納手続き☆ ・固定資産税や住民税の請求先変更☆ ・クレジットカードの解約☆ ・電気や水道など公共料金の契約変更☆ |
3ヶ月以内 | ・相続放棄や限定承認の申立★ ・被相続人の相続財産確認★ |
4ヶ月以内 | ・所得税の準確定申告★ ・青色申告の引継ぎ★ |
9ヶ月以内 | ・遺産分割協議書の作成☆ ・銀行や証券口座の名義変更や解約☆ ・死亡保険金の申請と受給☆ ・不動産や土地、所有自動車の名義変更☆ |
10ヶ月以内 | ・相続税申告の手続き★ ・相続税の納税★ |
1年以内 | ・遺留分減殺請求★ |
2年以内 | ・高額医療費請求★ ・死亡一時金請求★ |
5年以内 | ・未支給年金の受給★ ・遺族年金や寡婦年金の受給★ |
(★は法律上期限が定められているもの、またはこの時期までに終えなければならないもの、☆はこの時期までに終えておくと望ましいもの)
悲しむ余裕がないほどやらねばならない手続きが多いですが、まず優先して先にやらなければならないのは以下の5つです。
・死亡診断書をもらう ・死亡届の提出 ・火葬許可申請 ・埋葬許可をもらう ・退職手続き |
また、被相続人が亡くなった場合に起こるのが金融機関の口座凍結。死亡届を提出した時点ではなく、相続人の誰かが銀行に申請をすると被相続人の口座が凍結され、預金を引き出せなくなります。
口座の名義人の変更をしたり、口座凍結解除の手続きをしたりしなければ一度凍結してしまうと、再度使えるようになることはないので注意が必要です。
2-2.遺産相続手続きに必要な書類
まず、遺産相続手続きを進めるにあたって、流れは生前被相続人が遺言書を遺してくれているかどうかによって変わってきます。
もし遺言書がなければ、相続人の間で誰がどの遺産を相続するのかを定めた遺産分割協議書の作成が必要となりますが、遺言書があれば原則その通りに遺産分割を行います。
遺言の方式には以下の3種類があります。
①自筆証書遺言 ②公正証書遺言 ③秘密証書遺言 |
②公正証書遺言であれば法的に有効であるケースが多いですが、自宅や貸金庫などから出てきた①自筆証書遺言や③秘密証書遺言であれば、家庭裁判所での検認手続きが必要です。これは遺言書の内容をはっきりとさせ、偽造を防ぐための手続きになります。
3.相続税などの税金について
まず、相続税とは相続によって財産を取得した場合にかかる税金です。
相続をしたら必ず相続税がかかるというわけではなく、相続した財産の額から借金や葬式費用を差し引いたあとの額が、基礎控除額を上回るときに相続税がかかってきます。
3-1.相続財産の調査
相続税を支払うためには、相続財産がどのくらいあるのかを調べなければなりません。
民法上、兄弟姉妹以外の法定相続人には相続財産のうちの「遺留分」を取得する権利が認められています。遺留分とは、法律上、取得することを保障されている一定割合の相続財産のことで、遺留分を取得する権利を「遺留分侵害額請求権」といいます。
3-2.相続税の計算方法
相続をしたら必ず相続税がかかるというわけではなく、相続した財産の額から借金や葬式費用を差し引いたあとの額が、基礎控除額を上回るときに相続税がかかってきます。
この「基礎控除」の額は、3,000万円+(600万円×法定相続人数)で計算できます。
例えば、相続人が「被相続人の配偶者と子2人」の場合、法定相続人数は3人となり、「基礎控除」の額は3,000万円+(600万円×3人)=4,800万円となるので、相続した財産の額が4,800万円以下であれば、相続税はかかりません。
控除されて取得した財産にかかる相続税は以下のとおりです。
法定相続分に応ずる取得金額 | 税率 | 控除額 |
1,000万円以下 | 10% | - |
3,000万円以下 | 15% | 50万円 |
5,000万円以下 | 20% | 200万円 |
1億円以下 | 30% | 700万円 |
2億円以下 | 40% | 1,700万円 |
3億円以下 | 45% | 2,700万円 |
6億円以下 | 50% | 4,200万円 |
6億円超 | 55% | 7,200万円 |
3-3.相続税の申告方法
相続税の申告と納税は、相続開始を知った日の翌日から10ヶ月以内に行うのが原則です。
遺産分割内容を決定したうえで行うのが原則となっていますが、法定相続分で財産を取得したと仮定して申告・納税を行うこともできます。
また、相続税も原則現金一括納付なので、相続をする際に相続人各々が取得する金融資産と不動産など換金しにくい財産とのバランスを考慮しなければなりません。
3-4.相続税の税額控除
相続税には基礎控除と配偶者控除などの控除があります。
相続税の配偶者控除は、被相続人の配偶者が相続した遺産のうち、課税対象となるものの額が「法定相続分もしくは1億6,000万円までを無税にする」という制度。
たとえば、相続人が「配偶者と子」であれば、配偶者の法定相続分は2分の1。そのため、遺産の2分の1までの相続であれば配偶者に税金はかかりません。課税対象となる相続財産が仮に10億円あったとすると、5億円までであれば配偶者が相続すれば相続税はかかりません。
4.相続手続で気を付けたいポイント(まとめ)
相続手続きの期限は、被相続人が死亡したことを知った時点からカウントダウンが始まります。
悲しむ暇もなく手続きに追われてしまいますが、急がなければならないものだけ先に済ませることが重要です。
相続内容を把握し、相続人が複数いる場合には遺産を分割し、それぞれの相続内容について相続手続きを行います。
また、遺言書があるかどうかで相続の手続きが変わってきます。
相続手続きをする際には遺言書の有無の確認から始めましょう。