公開日:2020.05.25 更新日:2024.08.21
【事例あり】空き家対策に有効な「活用」事例や、自治体の取組みを紹介
空き家は国内の総住宅数の13.6%を占めており、その数は約850万戸に上ります(平成30年度)。今後さらに増えることが予想されるなか、誰も住まない空き家を減らすことは、国や自治体としても重要な課題となっています。
それでは、自分の実家を空き家にしないためには、どのような対策を行えばよいのでしょうか。「売却」「管理」「活用」などさまざまな方法がありますが、まずは空き家にかかわる法律を理解することが大切です。
ここでは2015年5月に施行された「空家等対策の推進に関する特別措置法」(通称:空き家法)や、行政の取り組みを理解した上で、自分の状況に合った具体的な対策を考えていきましょう。
出典:平成 30 年住宅・土地統計調査 住宅及び世帯に関する基本集計|総務省
深刻化する「空き家問題」とは?
いわゆる「空き家問題」とは、主に人口減少や高齢化による空き家の増加を言います。
日本の人口は2008年をピークに減少に転じており、同時に高齢化率も上昇し続けています。これらの要因により空き家は増加を続けており、また、管理不十分な空き家が周辺環境に悪影響を及ぼすことも増えています。
出典:平成30年住宅・土地統計調査住宅数概数集計 結果の概要(総務省)
総住宅数の推移を見ると右肩上がりに増加を続けていることがわかります、総住宅数増加率は減少しているものの、人口減少や高齢化という背景があるため、空き家の増加は止まっていません。
管理不十分な空き家が問題になることも増えており、以前は個人が管理していた空き家も、現在では行政が介入して安全を確保するようになりました。
さらに空き家問題について知りたい方はこちら
空家等対策特別措置法とは
「空家等対策の推進に関する特別措置法」(通称:空き家法)とは、放置されたままの空き家が地域住民の生活環境に影響を及ぼしているため、これらを改善するために施行された法律です
「空き家法」の施行によって、自治体には空き家対策を実施する努力義務が課せられると同時に、対策を実施するための裁量も拡大されます。
空き家法の内容は以下のように大きく5つに分かれています。
・市町村は、国の指針に即して空家等対策計画を策定する ・市町村は、空き家等への調査、データベースの整備等を行う ・空き家にかかわる情報提供、利活用のための対策を実施する ・倒壊等のおそれのある「特定空家等」に対して、助言・指導等を行う ・空き家対策にかかわる費用補助、地方交付税制度が拡充される |
この法律のなかで、空き家の所有者に直接かかわるのは、『倒壊等のおそれのある「特定空家等」に対して、助言・指導等を行う』という内容です。
仮に空き家が「特定空家等」に指定されてしまうと、行政の判断で「立入調査」「指導・勧告・命令・代執行」の措置がとられてしまいます。代執行の上、解体された場合、その費用は最終的に所有者本人が負担することになります。
「特定空家等」とは、以下のような状態と判断されると指定されます。
・倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態 ・著しく衛生上有害となるおそれのある状態 ・適切な管理が行われないことにより著しく景観を損なっている状態 ・その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態 |
空き家をしばらく放置してしまい、管理ができていない場合、上記のような状態になっている可能性があります。こうした「特定空家等」に指定される前に、空き家の所有者は対策を行うことが重要になってきます。
空き家対策の現状は?現在の取り組み
「空き家法」が施行されて約5年が過ぎ、「空き家問題」が社会的な認知度を増してきました。しかしながら、総務省と国土交通省が2020年1月に開示した「空き家対策に関する実態調査結果」からは、前進しているとはいいがたい状況が伺い知れます。
なぜ「空家等対策の推進に関する特別措置法」が施行されたのにもかかわらず、空き家問題は解決へと進まないのでしょうか。
それには、おもに5つの要因が考えられます。
・空き家の所有者の特定が煩雑 ・助言、指導しても所有者が動かない ・解体の代執行の手順不明、費用回収が困難 ・空き家の利活用件数が伸びない ・全般的に人が足りない |
これらの要因について詳しく見ていきましょう。
出典:空き家対策に関する実態調査の結果に基づく通知(概要)|総務省、国土交通省
空き家の所有者の特定が煩雑
1軒の空き家につき所有者は一人とは限らず、相続等の関係で複数人で所有している可能性があります。全員を特定するために、行政側の事務負担が大きくなるのは想像できるでしょう。また、各地方行政において担当する職員の人数も限られており、すべての空き家に対応しきれていないのが現状のようです。
助言、指導しても所有者が動かない
所有者を特定し助言・指導をしても、所有者がその通りに改善するとは限りません。一回の助言・指導で改善が見られなかった71事例のうち、「無反応」(21事例)、「経済的理由」(18事例)、「相続放棄・相続人間のトラブル」(8事例)という状況が続いています。
解体の代執行の手順不明、費用回収が困難
解体を意味する「代執行」を実施する段階になっても、空き家はそれぞれケースが異なるため、実施手順に関する明確なフローがありません。担当職員からすれば、一体どこから手をつければいいのか分からず、代執行した後の解体費を所有者から回収することが困難な実情もある故、代執行がためらわるようです。実際に代執行を実施した48事例中、解体費用を回収できたのはわずか5事例にとどまっているようです。
空き家の利活用件数が伸びない
調査した93自治体のうち、55の自治体が移住・定住促進のために、空き家バンクを運営しています。しかしながら、移住・定住や空き家を活用したいという需要はあるものの、空き家バンクへ登録する戸数が少なかったり、所有者が空き家を活用する動きも鈍いといわれています。
全般的に人が足りない
全般的に空き家対策人員の人材不足も問題視されています。空き家対策の実施は各自治体で行っていますが、都内23区の行政でも、空き家対策人員は1〜3人で行っているのが現状です。
空き家対策事例
空き家対策には主に2種類あり、1つは個人や企業が行うリフォーム・リノベーション。もう1つは国や自治体が行う事業や補助金などです。
空き家対策は個人で行うには荷が重く、国や自治体だけでは権利の関係から解決が難しいところがあります。そのため、実際に空き家対策を行う場合は、両方を組み合わせることが大切です。
2つの空き家対策について、それぞれ事例を見ていきましょう。
空き家をリフォーム・リノベーションして活用
空き家は放置していると負債になってしまいますが、リフォーム・リノベーションをして貸し出すことで、継続収入を生み出す資産として生まれ変わらせることができます。
また、空き家が活用されることで周辺環境も改善され、店舗や賃貸住宅などに活用すれば地域を活性化する施設にもなり得ます。
そこで、ここではアキサポがリノベーション工事に関わった活用事例を5つ紹介します。
対策事例①:長年放置されていた空き家は土地を最大限利用した駐車場へ
築年数:築54年 駅徒歩:西武池袋線「西所沢」駅 徒歩7分 延床面積:約50.5㎡ 構造:木造2階建 |
10年間放置されていた空き家を駐車場に活用した事例です。この物件は、建物内の片づけや草木の手入れの手間が負担になっており、負担の軽減と土地活用を両立する方法として駐車場を採用しました。駅までの距離が離れていても収益をあげられる活用事例の一つです。
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対策事例②:設備周りを一新し使い勝手の良い賃貸住宅へ
築年数:築47年 駅徒歩:日暮里舎人ライナー「舎人」駅 徒歩13分 延床面積:約115.33㎡ 構造:木造2階建 |
築47年の空き家をリノベーションした事例です。劣化した内装や設備を改修し、繁茂した草木の解消や破損したカーポートの撤去などを行い、使い勝手の良い賃貸住宅に生まれ変わりました。
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対策事例③:母から受け継いだアパートは面影を残して新たな賃貸住宅へ
築年数:築50年 駅徒歩:京急本線「平和島」駅 徒歩9分、「大森駅」 徒歩10分 延床面積:約39.74㎡ 構造:木造2階建 |
築50年のアパートをリノベーションした事例です。風呂が付いていなかったため間取りを変更してユニットバスを設置、新築のようにキレイな内装に仕上がり「こんなに綺麗にしてもらってお母さんも喜ぶわ…」と、オーナーも感動する物件に生まれ変わりました。
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対策事例④:無垢材で建築したこだわりの家は大反響の賃貸住宅へ
築年数:築50年 駅徒歩:京急本線「平和島」駅 徒歩9分、「大森町」駅 徒歩10分 延床面積:約39.74㎡ 構造:木造2階建 |
4年間空き家になっていた注文住宅を賃貸住宅として貸し出した事例です。「大人の秘密基地」をテーマに設計された住宅で、ボルダリングスペースやペット用のシャワースペースなども設置されています。貸し出すにあたって一部修繕を行いましたが、リノベーションや改修は行っていません。
実際に募集をしてみると、募集開始から2週間で何組もの申込みがあり、愛犬家のご家族に入居いただくことになりました。
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対策事例⑤:7年以上借り手が見つからなかった空き家は現況を活かした新たな賃貸住宅へ
築年数:築58年 駅徒歩:京王線「上北沢」駅 徒歩7分 延床面積:79.33㎡ 構造:木造2階建 |
7年以上借り手が見つからなかった空き家を改修し、賃貸住宅として貸し出した事例です。キッチンや浴室など、老朽化していた水回りを交換したほか、間取りも変更して使い勝手を向上。さらに、内装全体をリノベーションすることで借り手を見つけることができました。
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7年以上借り手が見つからなかった空き家は現況を活かした新たな賃貸住宅へ
空き家問題に対する、自治体の対策
自治体が行っている空き家対策には、空き家バンクのように一律で行われている支援事業もあれば、自治体単位で行っている独自支援事業もあります。そのため、自分の所有している空き家がどのような支援事業の対象となるかは個別に調べる必要があります。
自治体による支援事業の例として以下のような制度があります
・空き家バンク ・空き家の解体に関する補助金 ・空き家の改修に関する補助金 ・空き家の取得に関する補助金 |
また、参考に空き家が多い10エリアの空き家対策記事を紹介します。
放置せずに対処すべき理由
国や自治体により空き家対策が行われていますが、空き家の所有者本人が対策を行うことがもっとも大切です。もし空き家をそのまま放置してしまうと、解体の代執行以外にもさまざまなリスクがあります。
詳しくは「うちの家は大丈夫?「空き家問題」で起こりうるリスク、原因、対策を解説」で紹介していますが、自分だけでなく、近隣に住む方や地域住民にも迷惑をかける事態へと発展する可能性も。そのまま放置しないようにするためにはどのような方法があり、どのくらいの費用がかかるのかを理解しましょう。
参考:空き家はリスク!今の不動産を空き家にしない7つの対処方法とは|土地活用ならHOME4U
参考:空き家の現状と問題について|国土交通省住宅局住宅総合整備課
空き家対策にかかる費用のシミュレーション
空き家を放置しないためには、大きく「売却」「管理」「活用」の3つの方法があります。それぞれどれくらいの費用がかかるのでしょうか。
売却する場合
空き家を売却すれば、資産を現金化できます。しかし同じ売却でも、「空き家のまま売却する」か「解体して更地にして売却する」かによって、状況は変わってきます。
空き家のまま売却した場合、解体費を必要としないため、金銭的な負担が少なくなることがメリットです。しかし、そのまま売却できるかは家の状態などにもよるため、個々のケースにより異なります。
東京都内、築30年、土地面積100㎡、延床面積120㎡の居住用戸建の場合
①建物付で売却した場合(個人向け仲介) 土地 3,932.5万円 建物 200万円 ②譲渡にかかる費用 仲介手数料 129.98万円 土地境界測量費用 20万円 抵当権抹消登記 5万円 ③手取り(①-②) 3,977.53万円 ※住宅ローンは完済しているが、抵当権抹消は未登記 ※最寄り駅より徒歩15分 ※成約事例による平均坪単価:約130万円とした場合 ※残置物が無い場合 |
反対に、更地にして売却した場合は解体費を負担しなければいけないため、金銭的負担がのしかかります。
東京都内、築30年、土地面積100㎡、延床面積120㎡の居住用戸建の場合
①相続後、空き家の3,000万控除を使った売却 土地 3,932.5万円 ②譲渡にかかる費用 仲介手数料 129.98万円 土地境界測量費用 20万円 相続登記 30万円 抵当権抹消登記 5万円 建物解体費 200万円 ③手取り(①-②) 3,547.53万円 ※住宅ローンは完済しているが、抵当権抹消は未登記 ※最寄り駅より徒歩15分 ※成約事例による平均坪単価:約130万円とした場合 |
維持・管理する場合
空き家を維持・管理することは建物の老朽化を遅らせることはできますが、根本的な解決には至りません。特定空家等に指定されるリスクは軽減されますが、維持・管理をしていくためには、費用や人手が必要となります。
東京都内、築30年、土地面積100㎡、延床面積120㎡の居住用戸建の場合
・維持・管理費 月額1万円 ・10年間 維持・管理をした場合の費用 120万円 |
空き家を「活用する」という選択肢
家は維持しつつ、資金も得たいという場合、空き家を活用するという選択肢もあります。
例えば、ジェクトワンの空き家再生事業「アキサポ」を利用した空き家所有者のうち、88%が自己負担ゼロ円で物件を再利用しています。さらに、利用者の73%は年間で20万円以上の収入を得ることができています。
東京都内、築30年、土地面積100㎡、延床面積120㎡の居住用戸建の場合
・収入 月額5万円 ・10年間借り上げた場合の収入 60万円 |
物件を売却、管理するだけでなく、再活用することで空き家対策につながることもあります。住まいの将来を考えたとき、活用するという選択肢があることをぜひ知っておいてください。