公開日:2021.04.16 更新日:2023.10.03
担当者が見た空き家問題の現状―解決策としてのアキサポ
「空き家活用事業をやりたい」-その想いでジェクトワンに入社した、地域コミュニティ事業部・印南に、実際に目にした空き家問題の現状とその解決策について、伺いました。
目次
入社の動機は「空き家活用事業をやりたいから」
―印南さんは空き家活用事業がやりたくて、入社されたのですよね。
前職では住宅のリフォームを行っていました。
建て替えることなく、住まいを強く美しく再生させる、というリフォームサービスだったので、いわゆる“ボロボロの家”というのも多く見てきました。
そこで感じたのは、“ボロボロの家”を簡単に壊してしまうのはとてももったいないことだなと。
乾燥しきった古い木材に対し、必要な耐震補強などを行えば、新築に見劣りしない強度を持った建物にすることもできます。
それを一律壊してしまうのはもったいないし、きれいにすれば使える物件がたくさんあるのだなと思っていました。
―でも、その“きれいにすれば”が難しいのですよね。
お金がかかりますからね。
自分が使うならまだしも、誰かに貸すとなればそれなりにお金をかけてきれいにしなければならないし、その“誰か”を見つけないとならないし。
―そこで、ジェクトワンが手がける空き家活用事業・アキサポ(※)に興味をもたれたのでしょうか。
家って、人が住まないとどんどん傷んでいくんです。
だから、空き家という状態は非常に危険なのですが、今までは「売る」か「壊す」のどちらかしかなかった。
でも、アキサポは第三の選択肢「活用する」を提案していて、しかもきれいにするためのリフォーム費用や借主を見つけることもしてくれる。
ぜひやってみたいなと思いましたね。
空き家をそのままにしておく理由の1位は「〇〇として必要だから」
―アキサポに取り組まれて1年経ちましたが、入社前からの新たな発見はありましたか。
空き家を空き家と思っていない所有者の方がたくさんいらっしゃることに驚きましたね。
所有者の方にお会いしても「物置として使っていますよ」とそもそも空き家であるという認識がない。
実は、空き家をそのままにしておく理由の1位って「物置として必要だから」なんです。
―それでは一向に空き家問題が解決されませんよね。
あと、その家に人が住まなくなる一番の原因は居住者の死亡です。
そうなると相続がからんできますよね。
本人が亡くなったらこの家をどうするのか、きちんと決めておかないと、権利関係がまとまらないまま放置されてしまいます。
私たちは、セミナーなどを通じて、“空き家になってから”ではなく、“空き家になる前”の対策がいかに重要かを発信しています。
―死後の話は、本人が存命中なのに不謹慎なのかなと思ったり、寂しさを受け入れがたかったりで後回しにしがちです。
そういった気持ちもわかります。
ただ、家は資産価値も高いですし、大切な思い出が詰まった家が“負動産”になってしまわないように、しっかり整理しておいてほしいですね。
―空き家問題解決に対し、有効な策は何だと思いますか。
「“空き家”という状態が良くない」、ということを行政が制度面から示していくのは一つの有効な策と思います。
今は特定空家(※)に指定されると、不動産に対する「住宅用地の特例」が適用されなくなり、固定資産税と都市計画税が上がることにはなっていますが、極論、居住や利用の実態がなくなった時点でそういった税制優遇を廃止してしまうのもありかなと。
※「空家等対策の推進に関する特別措置法」に定める、そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態等の空き家のこと。
参照:「空き家になった実家をどうにかしたい人に!管理・活用のポイントまとめ」
―確かに、空き家であることが“困る”状態でないと、なかなか動きませんよね。
また、空き家活用に対しての助成金の拡充も良いと思います。
参照:「空き家活用や解体するための助成金とは?適用条件や注意点について」
「空き家をそのままにすることは困るよ」
「空き家を活用するとこんな良いことがあるよ」
というのを今以上に制度を通じて示していくのは重要なのではないかなと思います。
所有者・利用者・地域住民がWIN-WINの関係にある活用
―アキサポを取り組むにあたって、大事にされていることは何でしょうか。
その土地に合った活用方法の提案です。
私たちは、空き家所有者さまから相談をいただくと、必ず周辺地域のデータを分析し、実際に近隣の方に「この土地に何がほしいか」をヒアリングしたうえで、活用方法の提案をしています。
例えば、築年数が不明の長屋があったのですが、近隣の方にヒアリングしたところ、「集う場がほしい」というニーズがあることがわかったので、カフェバルに活用しました。
―空き家が地域に喜ばれる使われ方をすると、所有者さまも嬉しいですよね。
他には、空いている土地の活用の検討の際に、お昼時、その土地の周辺にいらしたサラリーマンの方々に伺ったら、ランチどころがあまりないという話だったので、キッチンカーの出店場所として提案したんです。
参照:「キッチンカーで空いている土地を有効活用|メリットや活用事例を紹介」
このように、用途を最初から決めてしまうのではなく、空き家所有者・利用者・地域住民がWIN-WINの関係にあるような活用を心がけています。
―活用事例の一つ一つに温かみを感じます。では、印南さんがアキサポを通じて実現したいことは何でしょうか。
先ほどお話したとおり、そもそも“空き家”であることに気づいていない方が多くいます。
まずはそういった方々に“空き家所有者である”という認識を持っていただくこと。
そのうえで、空き家を所有することになってしまった場合、誰かに相談すれば解決できる世の中にしたいです。
もちろん、相談相手はジェクトワンではなく他の会社さんでもいいんです。
そのくらい、アキサポの仕組みや考え方が世の中に浸透している状態にしたいですね。
「アキサポは儲かる?」~みんなが知りたいアキサポのこと
―印南さんはアキサポのかたわら、空き家活用に関するセミナーに登壇されていますが、そこで参加者からいただいたいくつかのご意見に関して、お答えいただけますでしょうか。まずは、「活用事例の多くがカフェやシェアキッチンなどの商業系で、住宅地でも対応してくれるのか」です。
もちろん住宅地も大歓迎です。
住居をリノベーションし、借り手を見つけるといったお手伝いもできます。
また、ジェクトワン自体、再建築不可や既存不適格といった難あり物件を取り扱ってきた不動産のエキスパートの集団ですので、他で断られてしまったような物件についても、お力になれるかもしれません。
ぜひ一度ご相談ください。
―心強いです!次に、「アキサポで空き家所有者は儲かるのですか」…確かに気になるところかもしれません。
空き家を収益物件と捉えていらっしゃる場合ですね。
空き家を収益物件とするための2つのハードルは、①貸し出せる水準にまで改修すること、②借り手を見つけること、です。
改修にあたってはもちろん費用がかかりますし、どういった用途・間取りが好まれ、設備のトレンドは何なのか、どの程度の賃料設定が適正か、といったリサーチも重要になってきます。
これが不十分ですと、借り手を見つけられません。
アキサポの場合、工事費はジェクトワンが負担し、借り手を見つけるのもジェクトワンが行うので、所有者さまはリスクを負いません。
もちろん所有者さまとジェクトワンとの間の賃貸借契約に基づく賃料もお支払いします。
そして、当初お約束した期間が満了すれば、バリューアップした状態でお返ししますし、借り手との賃貸借契約を継続すればそのまま賃料が入ってきます。
十分に収益物件としての価値を提供できると考えています。
―確かに、リスクを負わずに数年後、資産価値が向上した物件が手元に戻ってくるのですよね。最後に、「地方ですが、対応してくれるのか」といったご意見です。
2021年6月よりアキサポの加盟店事業「アキサポネット」を開始し、現在、日本全国に提携企業を増やしています。
今後も順次拡大予定ですので、悩まれる前にぜひご相談ください。
ご相談いただき、口頭での解決策を示すこともできると思います。
―お答えくださり、ありがとうございました!最後に、アキヤノワダイ読者の方々へメッセージをお願いします。
アキサポは2016年に開始したサービスですが、おかげさまで少しずつみなさまに認知していただけるようになりました。
その結果、多くの自治体からもお声掛けいただき、官民連携により、今までジェクトワンだけでは取り組めなかった難しい案件にも取り組めるようになってきています。
所有者さまの大切な資産について、ジェクトワン独自のご提案ができるかもしれません。
オンラインでのご相談も承っておりますので、ぜひ一度、お気軽にご相談ください。
スタッフ紹介
印南俊祐(いんなみ・しゅんすけ)
地場の工務店で現場監督の経験後、大手デベロッパーにてリノベーション事業で200棟以上のリノベーションの施工管理を担当。2020年1月より株式会社ジェクトワンに入社。現在は、建築の現場の経験を活かし、空き家の問題解決に取り組んでいる。二級建築士、宅地建物取引士。